こわいことに、ユリ子はすぐにスピードになれた。

走る車の気流にのって走るバイクに、爽快感さえ持つほど。


180キロはさすがに早すぎだけど、いまは100キロくらい。

これでも充分、速い。





風を切って走っている。



リムジンよりも心地よい。
車をぐんぐん抜かしていく。

優越感。



片側、二車線。

右と左にトラック。

その真ん中をすり抜けようとする蓮山。


「え!?まさか真ん中をすり抜けるの?」

ユリ子は跨ぐ足をさらに縮めようとする。

トラックの狭い間に少しでも合わせるため。


スピードを少し落とし、

タイミングをはかる。


両方のトラックが水平。

直線の道路。




今だ。



息をのむ。


加速。


そして、侵入。


トラックは熱気を帯びていて、バイクを飲み込もうとする。


少しでも傾けば、トラックにあたってしまう。

ギリギリ。




次に息を吸ったときには、目の前にまっすぐな道路が広がっていた。


トラックの先には車がなく、
目の前に邪魔なものがない。


ゆるやかな下り坂。



ただ、広い。


青空が大半を占め


風を感じ、


広いこの大地を


ただ、走っている。



右に海がみえた。


キラキラと乱反射して、ユリ子は目を細めて凝らす。




「こんな気持ち、はじめて」



心からあふれる気持ち。