2人が足を踏み入れた瞬間。

地中から一気に巨大なイモムシのような怪物が姿を現した。

「オ゙ロロロォォォオ゙ 」

想像以上の大きさだったアンダー・ワームに一瞬ひるみながらもカムイは飛び出す。

それを見てリリーも詠唱を始める。


「はぁあっ!!」

カムイが孔気刀で攻撃するが弾力の強い表皮に弾きかえされてしまう。

アンダーワームは体中から触手を出してカムイを四方八方から串刺しにしようとしてきた。

触手は孔気刀で容易く切れるのだが、増え続けるそれは刀一本で手に負える数ではない。

さらに触手は切り裂くと黒い血を辺りに散布させ、カムイの視界を奪っていく。

カムイは無闇に攻撃することができないでいた。

「くっそ。」

アンダー・ワームがリリーに近づかないよう、なるべく間合いを詰めながらも、触手を躱すカムイ。

防戦一方になりながらも何とかその時間をかせいだ。



「カムイ!!アンダーワームから離れて。『ターピュランス《荒れ狂う乱気流の籠》』」

リリーの生み出した激しい乱気流がアンダーワームを飲み込み、鋭い風の刄が弾力の強い表皮をまるで紙を切るかのようにいとも容易く切り裂いていく。

「オ゙オ゙オ゙ロロロロッ……」

アンダー・ワームはぐにゃりと体躯をしならせると、頭から真っすぐに大きな音をたてて地面に倒れた。

どうやら倒せたらしく、アンダー・ワームはぴくりとも動かなくなった。


「はぁ、はぁ。仕留めたみたいだね。」

リリーに笑いかけるカムイ。

しかし触手によってかなりの傷を負っていた。

白いワイシャツが自らの赤い血と、アンダー・ワームの黒い血で汚れている。

リリーはカムイに駆け寄り傷口に手を当てた。

「今すぐ治療するからじっとしてて。」

リリーがまた呪文を詠唱しているとリリーのあてがう手が青白い光を放つ。

「カムイの傷を癒して『ヒール《癒しの光》』」

光が傷口を照らすと、みるみるうちにカムイの傷が塞がった。