少し廃れた宿。

朝日が昇ると壁の隙間から光が漏れて部屋の中に入ってきた。

少年の目についていた僅かな水滴を朝日は優しく照らしだす。





カムイは早起きだ。

小さいころから青空も同然の屋根の元で暮らしていた為に、日が昇れば起きるように体内時計がセットされているのだろう。

この日も宿主よりも早く起きてしまい、時間を持て余していた。

「はぁ……ジンとマールの前でどんな顔すりゃいいんだろ。」

深くついた溜め息は二人の人物の声でかき消される。

「いつも通り無表情でいいんじゃん?カムイらしくさ。」

「同感だな。しけた面してるお前なんてお前じゃねぇよ。いつもみたいに冷静にドンと構えてろよ。」

いつのまにか扉の脇に寄り掛かっている二人。

カムイはその時初めて思った。

「仲間っていいもんだな……」

普段のカムイだったら例えそう思ったとしても口には出さなかったことだろう。

でも、今は違った。

妙な安心感はカムイの口を普段より少しだけ軽くしてくれていたようだ。

「え?今なんて言ったの?」

しかし二人には言葉では伝わらなかったらしい。

しかし言葉よりも簡単に伝わる方法でカムイは伝える。

「なんでもないよ。ジン、マールありがとう。」

初めてみせるカムイの本当の笑顔。

二人にもきっと伝わっただろう。