「オレに聞かせたいこと?」
「ああ、聞いて驚くなよ。実はな――」
ジンは勿体ぶるかのように少しだけ間を置く。
「クラナドが見つかった。」
驚くな。なんてカムイには無理なことだった。
行方知れずの親友が見つかったと言うのだから。
「クラナドが見つかった!?本当か?どこで。」
ジンは手に持っていた地図を広げる。
「これはカヤトマ遺蹟の見取り図じゃな。」
「その通りです御老人。ここにはライル教徒しか入れない禁踏区域がある。」
ジンはカムイに分かりやすい様に見取り図を指でなぞりながら説明する。
「そしてその更に奥。聖壇に隠し通路があるのをホセが発見し、ついさっきオレが確認してきた。」
ホセとは鎖鎌を使う大男の旅団員のことである。
彼も軍に裁かれ命を落としていた。
「ふむ。確かに聖壇には祭司といえど滅多に入ることはない。理にかなっておるわい。しかし、よう侵入できたの。」
「まぁ、盗賊ですから。」
ジンが笑顔で言うとスクルドは何度も頷いて笑った。
「聖壇の奥に無属民のアジトがあった。どうやら四天士がいた形跡もあり、ここが無属民の本拠地の様だ。」
「クラナドは確かにそこにいたのか?」
はやる気持ちをやっとのことで抑え、カムイは落ち着いていた。
「オレは確認することはできなかったが、もしそこが四天士すらも集うアジトだとしたら、クラナドもいる可能性は高い。そうだろ?」
「ああ。」
力強いカムイの返事に、ジンは小さく笑った。
「そうだ!!そこにクラナドがいるのなら、マールを連れていかなきゃ。」
クラナドを助ける為にはマールしか使えない術が必要不可欠なのだ。
「ワシが呼んでおいた。じきにここにくるはずじゃ。とは言ってもスフィアの融合消滅か……ブルー・スフィアはどうするのじゃ?」
スクルドは少し心配そうに聞いてくる。
カムイは道具袋からブルー・スフィアを取り出した。
「なるほど準備は万端ということか。すまんの。この老いぼれ手助けできるのはここまでじゃ。」
スクルドはゆっくり目を瞑る。
すると牢の階段から人が降りてくる音がした。