轟音が響くとリリーの風かがかき消されていた。

風の中心にいたはずのカムイには傷一つない。

「破壊の光よ罪人を貫け『マダー・レイ《死相の灯》』」

カムイのフォースと逆回転の治癒フォースの波がカムイを襲う。

これはマールの使っていた細胞を破壊する技の応用としてリリーが考えたものだ。

けど全ての流れがカムイには見えている。

術のフォースの流れ、目標物へと行くまでの軌跡を駈ける流れ。

全ての流れと真逆の力を与えることでいとも簡単に相手の術をかき消すことができる。

「調子に乗るんじゃないよ。『アイシクル・バレッド』」

例えそれが触れたものを凍り付けにしてしまう弾丸だろうと関係ない。

弾丸が空を切る時におこる波から弾丸本体の流れが見ぬき。

空気の歪みが、通常見えない弾丸の位置を随時知らせてくれる。

そうなれば後はそれに、術を消した時同様の反対の力を加えれば…………相殺。

さっきのように横から力を加えれば弾丸の軌道をそらすことができる。

「今の俺には何も通じません。退いてください。」

カムイはまだ決心できずにいた。

さっきから相手の術を受け流した後に攻撃する時間も、余裕もたっぷりあった。

しかしそれをしなかったのはカムイにまだ迷いがあるからであった。