マサは少し考えて、言った。
「リト。」
サラはにっこりと笑った。
「じゃぁ私、明日からリトね!」
そうして、"サラ"という名前は葬り去られ、新しく、"リト"という名前の少女が誕生したのである。
「リト」というのは、マサが昔飼っていたカナリアの名前であった。
「リト」は、1年前に命を絶った。
近所の子供が投げた石が幾つも当たり、そのまま目覚めることは無かった。
そのときに、マサは生命の無力さを知ったものである。
その無力さがサラを見ていて甦ってきて、「リト」と言う名を呟いた。
「リト。」
マサはカナリアを呼んでいるようでおかしな感覚だったが、それは呑み込んだ。
「何?」
リトはマサの方に向き直る。
「この森からでるんじゃねぇぞ」
「?なぜ」
「…出たら、殺される」
「!!」
リトは目を見開いた。



