その手に触れたくて


原付から降りると隼人はあたしの頭を軽く撫で、


「少し濡れたな。でも間に合ったかも」


あたしの頭から手を離し空をに見上げた。

さっきよりも凄い大雨になっていく雨。空から落ちてきた雨はアスファルトを打ちつけている。


「来いよ」


そう言って歩いて行く隼人の背中を見て思った。

確かにここは家で、誰の家かも分かんない。でもあたしだって、それほど馬鹿じゃないから分かんない訳でもなく、


「ねぇ!!」


一応声に出してみた。


「あ?」

「誰の家?」

「俺んち。ってか早く来いよ、乾かさねーと風邪ひくぞ」


やっぱし隼人んちだった。なんであたしは隼人の家に居るの?なんであたしは着いて来た?

分かんない。あまりの急な出来ごとについていけない。

帰ろうと思っても、この大雨じゃ帰れる訳もなく、それよりあたしの鞄が隼人の手にある限り帰れない。