その手に触れたくて


「掴まれよ」


そう言って隼人が原付を発進させる。

少し激しくなってきた雨なんてどうでもいい。制服が濡れるのなんてどうでもいい。


そんな事より、あたしが何で隼人と一緒にいるのか、何であたしが隼人の原付の後ろに跨っているのかが不思議で仕方がない。


隼人の腰に腕を回し背中に顔をくっつけると、そこから隼人の体温が伝わってくる。


何で…何で、あたしを構うの?忘れようとしてたのに、忘れようとしてたのにこんな近くに居ると忘れられなくなっちゃう…

どうしようもない感情からあたしの目から熱い涙が零れ頬を伝わった。


ほんの数分走った後、原付がガレージの中に入り、


「美月…」


隼人の声にハッとし、慌ててあたしは隼人から手を離した。


「あっ、ごめん」

「いや…ってか降りろよ」


隼人は後ろを振り返ったまま言う。