隼人は何回かあたしに話してきたけど、あたしは何も話さず隼人を避けつづけた。

そのあたしの冷たい空気に隼人は気づいてたんだと思う。だって隣にいる隼人から何回か溜息が洩れていたから。


話し掛けないで…って言えたらどんなに楽になるんだろうって、何回か思った事はあった。

だけどそう言えないのは、隼人の声をもっと聞きたくて、隼人を身近に感じていたいからって無意識にでもそう思う事だった。


あの時、隼人に教科書なんて貸さなきゃよかった…

あの時、夏美と屋上なんていかなきゃよかった…

あの時、夏美と一緒に、颯ちゃんちなんかにいかなきゃよかった…


思う言葉はいっぱいあって、今思っても考えても、どうすることも出来ない事ばかりだった。



そんな調子がずっと続いて7月に入ってすぐの頃だった…


「美月、今日はどっか行く?」


いつもの放課後、夏美はあたしの教室に来て、そう言った。