その手に触れたくて


「付き合う条件」

「……」

「喧嘩しねー事」

「…それが約束?」

「そう」

「……」


あの真冬。

隼人は何度もお兄ちゃんに頭を下げに行ってた。

そして、お兄ちゃんが認めてくれた事に驚きを隠せなかった。


あの時、隼人は言ってた。

“喧嘩はするな”って。

きっとそれがお兄ちゃんと隼人の約束だったんだ。


「なのに全然吹っ切れてなくて。美月にしたらそんな事?って思うかも知んねぇけど、俺と響さんの仲じゃそうにもいかなくて…」

「もしかして…別れよって言ったのそれが原因?」

「それもあるけど…」

「…けど?」

「いや、何でもねぇ…」

「……」



そう曖昧に呟いた隼人は少し表情を崩す。

その先が気になった。でも、何でかしんないけどその先は聞けなかった。


「ごめん、美月…」


はっきし言って何の“ごめん”なのか分からなかった。


今までの事?

迷惑かけたから?

それともあたしとは無理って事?


感じとられる事は沢山あって、何もかもが分からなかった。