その手に触れたくて


「送る」


そう言った隼人はあたしの頭から手を離し背を向ける。

まだ、話がいっぱいあるんだよ?


なのに帰るの?

あたしから隼人が離れてく。

その距離が凄く離れた時、


「…隼人ッ!?」


あたしはそう叫んだ。

目の前の隼人は立ち止まって振り返る。


「どした?」


ズボンのポケットに両手を突っ込んでる隼人は不思議そうに首を傾げた。


「もう、終わりなの?…あたし達もう前みたいに戻れないの?」


何故か潤んでくる瞳と、震えてくる唇。


…もう、このまま終わっちゃうの?


身構えるあたしに対して隼人は少しづつ視線を落としてく。

その瞳が“ごめん”って言ってる様に思えたのは気の所為だろうか。


「俺…、約束守れなかった」

「…え?」


…約束?


「美月の兄ちゃんとの約束」

「……」


約束。そう言えば、いつか忘れたけど直司が言ってた事があった。

隼人とお兄ちゃんが何かを約束してるって…


そう言ってた事があった。