その手に触れたくて


「どうして?だって殴ったのお兄ちゃんじゃん!!」

「俺の自覚がなかっただけ。殴られて当然の事をやったのは俺。…にしても結構きいたな」


唾と混じって吐き捨てられたのは血。


「…隼人、水買いに行こう」


その吐き捨てられた唾の血があまりにも多くてあたしはそう言うしかなかった。


「あぁ…」

「立てる?」


口の中が相当な血なのか隼人は何度も吐き捨てて軽く頷く。

立ち上がった隼人は軽く頬を擦りながら顔を顰めた。


「つか、アイツ…」

「…アイツ?」

「夏美。…アイツまじ本気で叩きやがった。そっちのほうがきくわ」


そう言った隼人は苦笑い気味で小さく笑う。


「あたしの…所為だよね…」

「は?誰も美月の所為って言ってねーじゃん」

「そうだけど…」


それ以上何も言えなかった。

聞きたい事は山ほどあったはずなのに、こうして二人で居ると何も聞けなかった。


隼人が歩く後ろをあたしは追う。少し先に見えたのはコンビニ。


「ちょっと待ってて」


そう言ったあたしは駆け足でコンビニに入った。