その手に触れたくて


「帰るけど大丈夫?」


不安そうな声を出す相沢さんにコクンと小さく頷く。

その隣にいる夏美は相変わらず不機嫌まっしぐらで口を開こうとはしない。


そんな夏美を引っ張って行く相沢さんは小さくあたしに手を振って背を向けた。


隼人と二人になった辺りはホントに静かで周りの音さえ聞こえない裏路地。

だけど二人になったのにも係わらず何て言ったらいいのか分からなかった。


今のこの現状をどうしたらいいのか胡坐を掻いて俯いている隼人をジッと見てそう考えてた。


「…美月」


暫く経って聞こえたその声にあたしの止まってた意識が反応する。


「…え?」

「ごめん」

「え、あ…うん。ってかいいよ謝んなくて。…それよか大丈夫?」

「平気」

「お兄ちゃん…ほんと最低」


覗き込んで見る隼人の口元からは血が出てて痛々しさをます。


なのに隼人は、


「響さんの事、悪く言うなよ」


またお兄ちゃんを庇う。