その手に触れたくて


「剛…ありがと」


スッと耳に入ったのは相沢さんの声。

夏美から剛くんの方へと足を進めて行く相沢さんに視線を送る。


「別に…。つかお前帰りどーすんの?」

「帰り?」

「なんなら送っけど」

「あー…」


そう言った相沢さんはあたし達に目を向け、その視線にあたしはゆっくりと首を振った。


「あぁ…そっか。隼人居るもんな。んじゃ夏美も来いよ」


その剛くんの言葉に反応しない夏美は相沢さんの手に引かれる。


「あー…そうそう。香奈もさ、俺と係わんのもう止めとけよ。男いんだから誤解されっぞ」

「あー…うん」

「何?その微妙な返事。俺の方が良かったって?」

「あ、それはない」


きっぱりと言った相沢さんに剛くんはクスクス笑みを漏らした。


「はっきし言い過ぎ」


そう言った剛くんは別に何とも思ってない様に背を向けて、直司達とともに歩きだす。


「…美月ちゃん?」


不意に聞こえた相沢さんの声に反応する。