その手に触れたくて


「美月ちゃん、ごめん」


もう隼人を待つ眠さと疲労。

ぼんやりとするあたしの耳に、聞きなれた声が飛び込む。


「あ、…何?」


視界の先に入るのは今の今まで話さなかった直司の姿。

今から隼人の場所へと向かおうとするあたしは鞄を肩に掛け、スッと視線を直司に向ける。


「ちょっといい?」

「いいけど」

「美月ちゃん、寝てねーの?」

「え?」

「何かしんどそう」

「あ、大丈夫」

「そう。つか、言おうか言わないか迷ったけど、やっぱ美月ちゃんには言おうと思って」


そう言った直司は言いにくそうに眉を顰めた。


「何?」

「アイツ…隼人」

「隼人!?」


思わず食いかかる様に、あたしは目をグッと見開いた。


「5月かその変くらいからアイツ学校に来なくなったの覚えてる?」

「う、うん…」

「隼人さ、喧嘩抜けてから色々と揉めてたんだよ。裏で色々とあってさ、だから喧嘩に明け暮れて相当に疲れてた。言ってたよ、アイツ」

「……」

「約束守れなかったって、」

「…約束?」


そう言った直司の口から出た“約束”の意味が今のあたしには何も分からなかった。