その手に触れたくて


もう触れたくても触れられない存在だった。

忘れようとしていた隼人の存在がまた大きく膨れ上がり、あたしがおかしくなりそうなぐらい隼人でいっぱいになってた。


冷えきった風があたしの頬を傷めつける。

心にぽっかり空いた穴がもう塞がりそうにはない。

膨らんだ想いも、そう簡単に縮まりそうにもない。


好きだから、忘れられない。

好きだから、触れたいの。

好きだから、一緒に居たいの。


じゃなきゃ、あたしの居る意味が分かんないの。

隼人を忘れる事はもうしたくない。

隼人の体温だって、もう忘れたくないの。


もう何もかも全て…




隼人があたしを突き離してから、あたしは毎日の様に学校帰り隼人に会いに行く為に足を向かせた。

隼人に投げ掛けた通り、ビルとビルの間に身を潜めて毎日待った。

だけど隼人は姿を現さなかった。寒さで悴んでいく手に息を吹きかけ、一瞬だけ温まった手もすぐには冷たく、悴んでいく。


もう待つのにも限界だった。

終電までの時間をあたしはただひたすら待ってた。だけども、それももう限界だった。


夜になるにつれて下がっていく気温と、あたしの体温。


もう、本当にダメだと思った。