その手に触れたくて


「うん…そうだね」


思わず呟いたのが嘘の言葉だった。

ゆっくり目を開けて見つめる先の二人は寂しそうな瞳であたしを見る。


その表情がなんともいえないほど切なかった。


もう、心配かけたくないと思った。これが正しいか間違ってるかなんて分かんなかったけど、そう嘘を吐くしか出来なかった。

だから、剛くんに会った事も言われた事も全て何も言わなかった。


何をどう間違ってしまったんだろうか。

戻れるのなら、お互いを互いに求めてた頃に戻ってほしいと、そう思った。


会えない日々が、姿さえ見えない日々が重なっていくと、隼人の声すら忘れそうで、温もりも全て何もかも忘れそうで怖かった。


夏美が“隼人、辞めるらしいよ”って言ってきた今日と言う今日は、正直気分は冴えないままだった。

辞めちゃうんだ…って思うと余計に会えなくなる確率はゼロになる。同じクラスの直司にだって何も聞けないし、どうしたらいいのかなんて正直分かんなかった。


苦しい…


また精神的にまいってしまいそうだ。

もどかしくて、苦しくて、頭の中がどうにかなりそうで、あたしは帰ってすぐベッドに寝転んだまま何気なく携帯電話の電話帳から探し出した“隼人”の番号をジッと見つめてた。