その手に触れたくて


「でもっ、」

「そこがどんな所か知ってて言ってんの?」

「知って…ます」

「じゃあ、尚更じゃん。知ってんのなら深入りしねーほうがいい」

「でも、だけど会って話したい事があるんです」

「行ったら出てこれねぇ」

「分かってます」

「じゃあ、辞めときな」


素っ気なく返した剛くんはあたしに背を向けて歩き出そうとする。だけど、その腕を咄嗟に掴んでグッと引っ張ったあたしに、剛くんは顔だけを振り向かせあたしを見下ろした。


「…お願い」


小さく呟くあたしにもう一度、剛くんの眉がグッと寄る。

面倒くさそうに見るその瞳が何とも言えないほど怖く感じた。


「悪いけど、会わせる事は出来ない」

「じゃあ、隼人にそこから抜ける様に言って下さい」


何でか知んないけど自分なりに必死だった。

何でこんなに焦ってんのかも知んないし、何でこんなに隼人に会いたくてたまらないのか自分にでも分かんなかった。


ただ、そこがどんな所かを聞いた瞬間、とりあえず辞めてほしいって言う気持ちが強かった。


「俺が言っても多分無理だと思うけど」

「どうして?」

「アイツが決めた事だろ?どんな所か知ってて行った場所だろ?自分の意思で行ってんだから俺が言っても無理なんじゃねーの?」

「でもっ、」

「それにdarkって所はそう簡単には抜け出せねぇ。一度入ったら出れねーんだよ」

「……」

「正直、俺が言っても抜け出せねぇ。俺にはそんな力ねーから」



そう言った剛くんは深く息を吐き捨てズボンのポケットから新しいタバコを取り出して口に咥えた。