その手に触れたくて


どんなに苦しんで苦しんでしても。

どんなにもがいてもがいてしても。


そこから抜け出せない事はある。身体に覆っている邪魔者を追い払おうとすればするほど頭が痛くなる。

もう自分が自分じゃなくなる。

こんなに幸せだった頃からどん底に突き落とされる事ってあるんだろうか。まだ、好きで好きで隼人の事が好きって気持ちは変わんない。


でも、たまに見せてた悲しそうな辛そうな目は確かで、それを思い出すと激しく胸が痛む。

一睡も出来なかった。無理に寝ようとしても寝れなくて隼人の事ばかり考えてた。


“別れよ…”

“好きな奴できた…”


夢かと思った。もしかして本当は寝てたんじゃないかって思った。気づいてないだけで、本当は寝てて夢でも見てたんじゃないかって思った。

未だに伝う涙も夢の現象なんかじゃないかって思った。


でも携帯を開けると昨日隼人から電話があった事は確かで、ちゃんと履歴に残されている。だから昨日帰ったままで寝てた、制服のまま。

現実だと思いたくないけど、これが現実。


これから明るくなろうとする外は気味が悪いほど薄暗かった。

重い身体を起す。頭を何度か擦りあたしは風呂場に向かった。向かった先に見つめるのは鏡。泣いた所為で化粧も崩れてると思えば目が腫れている。


最悪だ。