その手に触れたくて


「もう疲れんだよ、マジで」


そう言った隼人は面倒くさそうに息を吐き捨てる。その見つめられる隼人の目があまりにも死んでる様に見えて疲れ果ててた。

何でこーなんの?何が理由?ねぇ、何で?


「あたし、直すよ?言ってくれたらあたし直すから」

「だからそー言うの重い」

「重いって…」

「つか、手っ取り早く言うと、お前より好きな奴が出来た」

「は?もっと意味分かんない」

「学校行ってなかったのも、電話に出れなかったのもその所為。これなら納得出来る?」


あたしを見る隼人の眼力があまりにも強くて、押しつぶされそうになる。今にも涙が出そうな瞳をグッと堪えた。


「じゃあ、どうしてこの前あたしにキスしたの?じゃあ、どーしてあたしと寝たのよ!!」


喜怒哀楽の怒を知ってしまえば、身体はそれに反応し震える。初めて知った。こんなにも、こんなにも辛くて悲しい出来ごとに身体が震える事を初めて知ってしまった。

今まで以上に声を上げるあたしに隼人は何の変化も見せずにあたしを見る。


「それって必要?」

「え?」

「別れるのに必要?」

「何それ…」

「まぁ、別にどーでもいいけど。好きじゃねぇ女とも簡単に寝れるって事。…男ってそんなもんじゃね?」

「分かんない。あたしには分かんない」

「お前には分かんなくても俺はそー言う奴」

「違う。違うよ、隼人はそんな人じゃないよ」

「何を根拠にそー言ってんの?俺の全てなんて分かんねーじゃん。ぶっちゃけ、付き合ってても美月の全てなんて分かんなかった。いつかは覚める時がくんだよ」


面倒くさそうにそう話す隼人が、隼人じゃないみたいに、淡白に無表情にそう言った。