その手に触れたくて


「もしかして起きてた?」

「美月が髪に触れた時」

「ごめん」

「いいよ」


優しく笑った隼人はあたしの後頭部に手を添え引きつける。必然的に重なった唇が自棄に激しく息さえする事も難しかった。


「は、隼人…」


離れてすぐ口を開くあたしに隼人はあたしをジッと身構える。


「もう一回する?」

「だ、誰か帰ってきたらどーすんのよ?」

「誰も帰ってこねーもん」


思わず言葉を継ぐんでしまったあたしに、隼人はクスクス笑う。


「嘘、嘘。美月、シャワーでも浴びて来れば?」


平然と言った隼人に何故かガッカリしてしまった自分は何なんだろう。拍子抜けしてしまった自分が何だか馬鹿に思えた。


「あ、うん…」


ベッドの下に散らばっている制服を掻き集めて、身に纏う。

隼人に言われた通りあたしは風呂場に行ってシャワーを浴びた。


「俺もシャワー」


脱衣所を出てすぐ出くわした隼人とすれ違い、あたしは先に隼人の部屋へと入る。と同時に聞こえて来たのがテーブルに置いていたあたしの携帯の振動音だった。

震えているそれに手を伸ばし画面を見る。


…夏美。