その手に触れたくて


「分かった。んじゃあ、とりあえず家戻ろうぜ」

「うん。ありがと」


ワガママだったかもしれない。でも、一分一秒でも隼人と居たい。

一緒に居たくて居たくて自分でも仕方がなかった。


最後に一通り辺りを見渡して夜景を目に焼き付けた後、隼人が漕ぐ自転車の後ろであたしはボンヤリとしてた。

キッと音が微かに聞こえ、視線を上げると隼人の家に着いていて、あたしは自転車から降りる。


「先、行ってて」


玄関先でそう言われた隼人に頷いてあたしは先に隼人の部屋に向かった。

真っ暗な暗闇を掻き消すように、あたしは電気を点ける。と、同時に目についたのがテーブルだった。

灰皿から溢れるくらいの吸い殻。床には無雑作に置かれているバイクと車の本。

見るからにいつも以上に荒れ果てている部屋。

その部屋を見渡しながらあたしは床に腰を下ろした。


「お茶しかねーけど」


そう言って入って来た隼人の手にはグラス2つとペットボトルが握られてて、差しだす隼人にあたしは手を伸ばす。


「ありがと」


グラスにお茶を注ぐと、あたしは乾ききった喉にお茶を流し込んだ。