その手に触れたくて


「夏美、怒ってるよね」


先生に見つからない様にと校舎を出てすぐ、あたしは隼人にそう問い掛ける。


「つか怒ってんのはいつもだろ」

「そんな事言ったら夏美怒るよ」

「いや、もうあれは怒ってたし」

「だよね…」

「でも別に何も思ってねーだろ」

「だといいけど」

「つか美月、もしかして歩きで来た?」

「うん。隼人は?」

「じゃあ自転車ねーわ。俺も歩きだし」


フゥーっと息を吐いた隼人は少し顔を顰めた。


「まぁ、いいじゃん。ねぇ、何処行く?」

「得に決めてねぇ。何処行きてぇ?」

「うーん…。隼人と一緒なら何処でもいい」

「何だそれ」


そう言ったあたしに隼人はフっと鼻で笑う。

まるで昨日の事が嘘の様に吹っ飛んだ。頭痛いのだって嘘みたいに吹っ飛んで、本当に隼人と居る事があたしにとっての幸せなんだと思った。

その後は隼人とショッピングモールをブラブラと歩いたり、これといって何もしてないけど隼人と歩き回った。


「なぁ、美月?」

「うん?」

「夜景見に行かね?」


外が暗くなり始めた頃、丁度隼人の家に着いた時に隼人はそう言った。


「あ、うん。いいけど急に何で?」

「最近行ってねぇなって思って」

「うん、いいよ。あたしも久々に行きたい」


微笑むあたしに隼人は優しく口角を上げた。