その手に触れたくて


「あ、そうなんだ」

「で、美月は何してんの?」

「あ、うん。隼人待ってる」


そう言いながらあたしは階段を見つめた。


「隼人?」

「うん」

「何で?」

「帰ろって言うから」

「え、美月帰んの?」

「うん…そうなってしまった」

「ふーん…まぁ、仲良さそうだからいいけどさ」


夏美に視線を向けると、膨れっ面になった表情を緩める。


「待たせて悪りぃな」


ふと聞こえた声に視線を向けると隼人は自分の鞄とあたしの鞄を手に持ってた。


「あ、ごめん」

「全然」


口角を上げた隼人はあたしから視線を夏美に向ける。


「あのさ、もし担任が聞いてきたら適当に言っといて」

「えっ、あたしが?」


突然話を振られた夏美は自分の顔に指差す。


「お前以外に誰が居んだよ」

「はいはい、分かりましたよ」

「ちなみに美月の担任にも」

「はいはい」


面倒くさそうに返事をする夏美にあたしは顔を顰めて顔の前に手を合わせた。