その手に触れたくて


「え、サボるって…」

「美月、体調悪いし」


“俺の所為で”

付け加える様に呟かれた言葉は、何だか沈んだ声にも聞こえた。でも、その声を掻き消す様に隼人は笑ってあたしの頭をクシャっと撫でる。


「あたし大丈夫だよ。風邪じゃないし」

「いや、でも今日は帰ろ」

「えー…いいのかなぁ」

「単位なら大丈夫だぞ」

「うーん、じゃあ隼人と居る」


一緒に居たい。数日間、居なかっただけで寂しかったから今は隼人を独占した気分で一緒に居たい。

ダメだ、あたし。隼人に凄くのめり込んでしまってる。


「じゃあ鞄取ってくっからここに居て」

「え、あっ、うん」


そう言ったあたしに隼人は急いで階段を駆け上がる。そして、あたしは隼人が来るまで廊下の壁に背をつけて待ってた。


「美月!!」


不意に聞こえた弾ける声に、あたしは視線を向ける。

職員室の方向からやって来るのは、少し膨れっ面になった夏美。その顔が何となく隼人に対しての怒りなんだと思ってしまった。


「あ、夏美…」

「大丈夫?隼人から聞いたけど」

「うん、平気。って言うか、もしかして夏美、隼人に何か言った?」

「は?何で?」

「なんか怒ってるっぽい」

「別に怒ってもないし何も言ってない」


ちょっと多少は驚いた。いつもなら曖昧な行動をとる隼人に夏美はいつも反抗してたけど、何も言ってない事に正直驚いた。