その手に触れたくて


暫く走ると夏美が言っていた急な坂あり、歩いても疲れそうな感じの坂だった。

坂の真ん中で少し後ろを振り向くと、まだ夏美達の姿は見えなかった。


「大丈夫かな?」


ついこの坂を見てボソッと呟くあたしに「ん?」と言って隼人は顔を少し後ろに向ける。


「この坂かなりキツイじゃん」

「あー平気、平気。気にすんなって」


隼人はそう言ってうっすら笑う。

坂を上りきって少し走ると駐車場があり、その場で颯ちゃんとあっちゃんが地面に腰を下ろし待っていた。

颯ちゃんの原付の横に隼人は停めると、あたしは原付から下りる。


「隼人、ライター持ってね?」


あっちゃんは人差し指と中指にタバコを挟んで手首をクルクルと回す。


「何?持ってねぇの?」

「ライターだけ忘れた。颯太も持ってねぇんだよ」


隼人は原付から下り、ズボンのポケットに手を突っ込んだ後、一瞬、空を仰ぎ視線を下に落とした。