「何かあるなら聞くよ。美月のそー言う顔って結構悩んでる顔」


さすが夏美だ。…とでも言いたい。


「うーん…」

「何よ?」


夏美はそう言って隣からあたしの顔をさらに覗き込む。目の前に居る相沢さんまでもがあたしをジッと見つめる。


「なんか…」


ポツンと言った言葉に、「うん」とすぐさまに返ってくる夏美の声。

あたしは一旦、喉を潤そうとレモンティーを口に含んでゆっくり口を開く。


「なんかさ…抜けたって…」

「は?抜けた?何が?」


ホントに意味が分かんないって感じの夏美はケーキを口に運びながら言葉を吐き出す。


「隼人が喧嘩を…」

「抜けたって喧嘩を抜けたって事?」

「うん、そうそう」

「急に何で?」

「お兄ちゃん影響…」

「あー…じゃなきゃ認めないって事か」

「うん」

「でも、それで良かったんじゃない?ちょっとは大人しくなればいいんだよ。隼人もさ、これで馬鹿みたいな事やんないでしょ。ね、相沢さん?」


スラスラと言葉を並べて言った夏美の視線は目の前に居る相沢さんに向けられる。

だけど相沢さんはしっくりこない表情をしていて少しだけ眉を潜めた。