その手に触れたくて


「さすが夏美だね…」


苦笑いで呟くと、「それくらい分かるよ」そう言って肘であたしの腕を突いた。


「あっ、ここ、ここ」


暫くたって声を上げたのは相沢さん。

真正面に指差して見つめる先はオープンしたばかりであろうって感じで店の前には花が飾られてある。

シンプルな真っ白な壁面でガラス張りになっていて、外からも中の風景が良く分かる。


「げっ、さすがに人多いよね」


ガラス張りの奥を見渡す夏美はそう声を漏らす。


「だってオープンしたばかりだからね。席、開いてるかな…」


相沢さんがドアを引いて入る。

その後を続いてあたしも夏美も中に身を顰めた。


「あったかーい」


思わずテンションがたかくなるあたし。

外とは断然違う温度にホッとする。


「ねぇ、奥開いてるって」


先を進んで行った相沢さんの声が前方から聞こえる。


「やった」


そう言ってルンルンに足を進める夏美の後を追った。

相沢さんが開いていると言った席に足を進ませると、今まさに開いただろうと言う感じで店員さんがテーブルを拭いていた。

テーブルを拭き終えた店員さんはあたし達が座るのを見てから反対側の手に持っていたメニューをテーブルに置く。


「ご注文が決まりましたらお声の方をお掛け下さいませ」

「はーい」


店員さんの後に続いて相沢さんと夏美がハモル様に声を出した。