その手に触れたくて


「それにしても寒いよね」


学校を出て3人でカフェに向かう途中、相沢さんが苦笑い気味でそう呟く。


「マジ、寒すぎ」

「うん、だね」


夏美はポケットからカイロを取り出し両手で擦り合わせて身体を震わせ、その後に続いてあたしもブルっと震わせた。


「あ、そうだ。美月ちゃんもう風邪大丈夫なの?」


思い出す様に言葉を吐き出した相沢さんは真ん中に居た夏美を飛び越えてあたしの方へと顔を覗かせる。


「うん、大丈夫だよ」

「ってか、昨日休んで今日なのに誘って大丈夫だった?」

「全然、平気」


そう言ってニコって微笑むと、


「大丈夫、大丈夫。隼人の愛がこもってんもんね」


意地悪く夏美はクスクスと笑った。


「もー、やめてよ!!」

「だってほら」


あたしの顔を覗き込んだ夏美はあたしの首元にそっと触れネックレスを救い上げる。


「うわー、綺麗」


相沢さんが声を上げると夏美はニコっと微笑んだ。


「朝、なかったのに…」


そう言って夏美はネックレスから手を離し、視線を前に向けた。