その手に触れたくて


「美月ー!!」


前方から弾ける夏美の声に視線が行く。

廊下のずっと先に大きく手を振った夏美の姿が目に映る。


「なぁ、美月?」


そんな夏美を見ていると隣に居た隼人は足を止め、その所為であたしの足も必然的に止まった。


「何?」

「アイツと居て疲れねーの?」

「え、何それ?」


思わず笑みを漏らすあたしに隼人は顔を顰める。


「いや、アイツのテンション半端ねぇ…」

「えー、疲れないよ。だってあたし夏美の事スキだもん」

「俺より?」

「へ?」


素っ頓狂な声を出すあたしに隼人はクスクス意地悪く笑みを漏らす。


「だから俺より?」

「えー…うーん…。どっちも一緒かなぁ…」

「おい、そこは俺って言えよ!」


そう言った隼人はフッと笑いながらあたしの額を人差し指で突く。


「あ、うん。隼人」

「言うの遅せぇ…。まぁ、アイツはうっせぇけどいい奴だからな」

「うっせぇなんて言ったら夏美怒るよ?」

「……」

「ねぇ、美月!?」


クスクス隼人の笑う声に混じって割り込んできたのは夏美の明るい声。隼人と見合わせてクスクス笑うあたし達に夏美は不思議そうに見つめる。