「隼人…あたしの為に毎日お兄ちゃんの所に行ってくれてたんだよね…。だから、あんな高熱…」
思い出しただけでも何だか申し訳なく感じた。
わざわざ夜の寒い寒い時間に何時間居たのかも分からないくらいお兄ちゃんに会いに行ってくれた。
それがホントに申し訳なく感じた。
あたしは何もしてないのに…
あたしは隼人の為に何もしてないのに…
「別に美月の為じゃない。俺自身の為。俺が美月と居たいがためにやった事。だから美月がどーこう言う問題じゃねぇ」
「でも…じゃなかったらあんな高熱だしてなかったよ?直司も言ってた。隼人があんな風邪引くの初めてだって…」
「…つか、行ったから高熱だしたとは限らねーよ。何もしてなくても風邪引く時は引くしよ、俺だってアイツの知らねぇ所で風邪ひいてるっつーの」
「ごめん…」
「だから謝んなって。次、謝ったらマジでキレるぞ」
そう言った隼人は意地悪に笑って口角を上げる。
「もう…隼人…」
「それよかさ、これ美月に」
その話を遮ったかと思うと、隼人は座ってる隣の椅子から真っ白な手提げ袋を掴み、それを隼人はあたしに差し出す。
今の今までその袋に気づかなかったあたしは茫然としたままその差し出された袋をジッと見つめた。
「何?」
「開けてみ?」
隼人に言われるがままに、あたしはその袋に手を伸ばし中を覗き込む。
その中には長細い箱が入っていて真っ赤な包装しで綺麗に包んであって、白のリボンがかけられてある。
それを取り出して目の前に居る隼人を見ると隼人はゆっくり口角を上げた。



