その手に触れたくて


「来るのマジ遅せぇ…。美月が休みの間お前も来てねーし…俺、夏美の相手マジ大変だった」


思い出すかの様に隼人は深いため息を吐き出し眉に皺を寄せる。そんな隼人に直司は、


「それは良かった良かった」


そう言って声に出して笑った。


「笑い事じゃねーし、全然よくねーし」

「でもさ、隼人?夏美があたしだけ悪いみたいな言い方しないでって言ってたよ?」


2人の間に割り込んで言葉を吐き出すあたしに、2人の視線があたしに向く。


「は?何?つか、あいつどんな言い方してんだよ」

「まーまー、どっちもどっちなんじゃねーの?」


直司もあたしと同じ事を思ってたようで呆れた様に言葉を吐き出す。その直司とあたしが笑う隣で隼人は面倒くさそうに顔を顰めた。

と、同時に…


「あ、ナオ!!」


弾けた明るい声が教室を響わたった。

振り向けばそこに居たのは夏美。


「ナオ、また遅刻!?」


お説教とでも言うような夏美の声と同時にあたしの腕が軽く引っ張られる。その腕に視線を落とし、そこからゆっくり視線を上げると隼人はあたしの掴んでいた腕を離し、顎で廊下を指す。


「えっ、あ…」

「行こうぜ」


そう小さく言った隼人はあたしに背を向ける。


「もーお前、もう少しボリュウム下げろ…」

「はぁ!?」

「頭に響く…」


あたしの後ろで言い合う二人に苦笑いをしながら、あたしはスッと抜ける様にこの場から離れ隼人の後を追った。