その手に触れたくて


「え?」


落としていた視線を直司は上げる。


「ごめんね、色々と」

「え?何が?」


まるで分かっていないかの様に直司は首を傾げる。


「ほら、隼人が熱だした時、なんか色々と買ってきてくらたから」

「あー、それはアイツに頼まれた事だから…」

「あーうん。それに、あたしの調子悪かった時も声掛けてくれたし…」

「あー、全然。そんなの当たり前じゃん。つか、気づいてなかったら俺、隼人に殺されんじゃん。まだ死にたくねーし」


そう言って直司はニコっと笑い口角を上げた。


「殺されるって…」

「だってアイツ、キレたら半端ねーもん。ま、俺は何もしてねーから謝んなくていいから」

「あ、うん…」


そう言ってコクンと頷いた時だった。


「おーい、美月?」


あたしの呼ぶ声がドア付近から聞こえ、あたしはすぐに振り返る。そこに居た隼人は足を進めて、


「お前、今更くんなよ」


そのため息交じりで吐き出された言葉は直司に向けられる。


「は?何で?」


案の定、何が?って感じの直司は少し眉間に皺を寄せ隼人を見る。