その手に触れたくて


Γけど、良かったね。元気になって」

Γうん」

Γ隼人…凄く心配してたんだよ?隼人があんなに誰かを心配するのなんて初めてだと思う」

Γえ?そうなの?」


思わず下げていた顔を素早くあげると、


Γだって、ほら隼人ってどーでもいい奴には無関心だもん」


“ほら、あたしとか”
付け加えるかの様に言った夏美はクスクス笑みを漏らす。


その直後、チャイムがなり響いたと同時に夏美はあたしに手を振りながら教室を出る。


そのままあたしは視線を後ろに振り返り直司の席を見つめた。だけど、来ている気配すらまったくなくて…


「また、来てない…」


思った通りの言葉がポツンと口から洩れた。

直司にも色々と迷惑かけちゃったから謝りたかったけど、来てないんじゃ意味がない。


フゥーっと息を吐いたあたしは、とりあえず始まる授業に耳を傾けた。



「おー、美月ちゃん元気になった?」


そう直司が声を掛けて来たのは4時間目が終わってすぐの事。もう昼休みに入ってすぐの事だった。


「あ、おはよ。もしかして今来たの?」

「あー…うん。二度寝してた」


そう言って笑う直司は持っていた鞄を机の上に置く。その直司の後を着いて行ったあたしは、「あのさ、」と小さく声を吐き出した。