その手に触れたくて


「あたし漕ぐよ?」

「いいよ。ここまで美月が漕いでくれたんだし…。後ろ乗って」

「うん」


お言葉に甘えて後ろに跨ると、背後から原付の音が近づいてきて夏美とあたしは振り返る。


エンジンを吹かす颯ちゃんの後ろにあっちゃんが乗っていて、その後ろから隼人が原付に乗って近づいてくる。


「あれ?隼人、原付あんじゃん」


夏美が不思議そうに問い掛ける。


「これ直司のん」

「あれ?ナオは?」

「現金取りに行き中でーすっ!」


あっちゃんが言った言葉に颯ちゃんは笑いだす。


「あ、美月ちゃん今の内に隼人の後ろに乗んなよ」

「え?」


あっちゃんがあたしを見て言ってくる言葉にあたしは戸惑う。


「早く、早く。早くしねぇと直司くんぞ」


そう言って、颯ちゃんまでもが急かしてきた。

どうしようか迷って、夏美の背中をポンポンと叩くと夏美はニコッと微笑む。


「それがいいよ。あの坂、歩くのも疲れるし、あたしも楽チンだしさー」


そう言って夏美は上機嫌に答える。