その手に触れたくて


「隼人が夏美に振り回されたって言ってた」


そう言いながら教室に入るあたしの後を夏美は着いて来る。


「えっ!?それってあたしが悪いみたいな言い方じゃん」

「だって夏美、隼人をパシリにしたんでしょ?」


目線を向けながらあたしは鞄を机に置き、椅子に腰を下ろす。


「パシってないよ。ただ買って来てって言っただけだもん」

「それをパシリって言うんじゃないの?」

「あのねー美月、確かに1日目は隼人が行ったよ?けど2日目は隼人が今度はお前が行け!って言ってきたから、あたしが行ったんだからね!!」


最後は物凄く強調して言ってきた夏美は頬を膨らませて、そのまま深く息を吐き捨てた。


「なんだ、どっちもどっちじゃん」


聞いてて呆気に取られてしまった。

今、あたしの頭の中は二人で揉めあってる姿が浮かぶ。思わず笑みを漏らしたあたしに、


「何、笑ってんの?」


不機嫌にもとられるような夏美の声が耳に入る。


「何でもないよ」

Γどーせ美月は隼人の見方でしょ!?」

Γいや、そんな事はないけど…」

Γじゃあ、あたしの方がいい?」


意地悪くあたしの顔を覗き込む夏美はニコッと口角を上げる。


Γんー…どっちも一緒」

Γ嘘つきー!隼人の方がいいもん。って顔してるよ!」

Γしてないって!!夏美の意地悪…」


膨れっ面になるあたしに夏美はクスクス笑みを漏らす。