その手に触れたくて


「敦也も颯太もいねぇしよ」

「そーなんだ」

「だからそうなると俺しかいねーじゃん」

「うん」

「昼休みはパンがいいから買って来て。とか言うしよ」

「え?夏美が?」

「あぁ。寒いから購買行くのヤダ。とか言いやがるし。マジ俺、アイツのパシリになってた」


深いため息を付きながら隼人は本当にまいったって感じにそう話してく。


「なんか、夏美らしいね」


そう言って笑うあたしに、


「笑いごとじゃねーし」


本当に困った感じで呟かれた。

学校まで隼人の愚痴を聞きながらあたしは悪いと思いながらも笑ってた。


深いため息を吐き出す隼人は本当に疲れ果ててて、少し可哀相にと思った。


「美月!!おはよ」


学校に着いて早々廊下に飛びかかってくるのは夏美の張り上げた声。思わず見てしまった瞬間、あたしは苦笑いをした。


「何?どうしたの?」


何も思ってないかの様にそう言ってくる夏美に、またあたしは呆れた様に笑う。


「夏美…隼人困ってたよ」

「え?何が?」


案の定、返ってくる言葉は何も思ってないと言う呟き。

キョトンとする夏美はあたしをジッっと見つめて首を傾げた。