その手に触れたくて


「…隼人っ、」


グッとあたしが押した所為で離れた瞬間、あたしはそう声を出す。


「もう一回、俺にうつせよ」


真剣な目であたしを見た隼人は、もう一度あたしの唇を塞いだ。

激しく重ねてくる所為で息さえし辛い。


声を出そうにも出せない隼人に、あたしは隼人の胸を精一杯力強く押した。…のに、やっぱり身体が弱ってる所為で力なんてほぼ出なかった。

ポンポンと隼人の胸を叩くあたしに隼人はもう一度塞がっていた唇を離す。


「隼人、誰か来ちゃう」

「来ねーよ」

「来るって。来たらどーすんのよ」

「別にいいじゃん」

「ダメだって」

「ここでヤるよりマシじゃん」

「ちょっ、」


隼人の言葉で思わずそれ以上声なんて出せなかった。

意地悪に笑う隼人が何だか憎い。


「つか、俺が風邪ひいた時、美月からもしただろ?だったら俺もいいんじゃねーの?」

「……」

「美月に拒否る権利はねぇよ」


口角を上げた隼人は唇を重ね合わした瞬間、こじ開ける様に舌であたしの唇を割った。

入ってくる生温かい隼人の舌があたしの舌と絡まり合う。


マジでもう一度、隼人にうつっちゃうんじゃかいかってくらいに隼人は深くキスをした。

だけどほんの数分だった。ガラっと開く扉の音であたしの身体がビクンと飛び上がる。瞬時に隼人の胸を押し唇が離れた瞬間、カーテンの向こうの見えない方向に目を向けた。