その手に触れたくて


「橘くん、ちゃんと教室行きなさいよ。先生ちょっと用事で抜けるから」

「はい、どーぞどーぞ。ごゆっくり」


ヒラヒラト手を振った隼人はあたしを囲むようにシャっとカーテンを閉める。


“まったく”…と聞こえた先生の声にあたしは振り絞って小さく笑った。


「…隼人?まだしんどいの?」


病み上がりと言った隼人にそう問い掛ける。


「…んな訳ねーじゃん。すげー元気」


そう言って隼人は柔らかく笑みを漏らす。


「大丈夫だよ、あたし。寝てるから」

「あぁ」

「ごめんね」

「だから謝んな。元はと言えば俺の風邪だろ?」

「隼人じゃないよ」

「馬鹿。俺に決まってんだろ」


ギィ…っと音を立てて立ち上がった隼人はあたしを覆いかぶさる様に見つめる。


「隼人?」


突然、目の前に表れた隼人の顔に戸惑うあたしは思わず目を泳がした。

だけどその瞬間、あたしの唇が隼人の唇で塞がる。


一瞬の出来事に驚いたあたしは思わず隼人の肩を両手で押した。