その手に触れたくて


「いつから?」


そう言って近づいて来た先生は寝てるあたしを見下ろす。


「朝、ちょっとダルイなって思ってて…」

「うん、熱いわね」


先生の冷たい冷たい手が額に触れてそっと離れる。


「ちょっと測ってみて」


続けられた言葉とともに渡されたのは体温計。あたしはコクンと頷き、先生の手から体温計を受け取りそれを脇に挟んだ。

なんか、朝よりもしんどい。体力がグッと落ちて行くように身体に力が入んない。喉も何だかおかしい。


「大丈夫か?」


隼人はあたしを心配そうに見下ろし頭をクシャっと撫ぜた時、


「大丈夫な訳ないでしょ?橘くん、この寒いのに連れ回してたんじゃないの?女の子はか弱いんだから」


フッと短く息を吐いた先生は椅子に腰を下ろす。


「連れ回してねーよ。俺の風邪がうつっただけ」

「ほら橘くんが夜遊びばっかりしてるから」

「してねぇっつーの!」

「どうだかねぇ…」

「…先生?]


ため息交じりで呟いた先生にあたしは小さく声を掛ける。

隼人は悪くないって言おうとした時、


「美月はしゃべんな」


隼人の声とともにピピッと電子音が鳴った。