その手に触れたくて


「…隼人?」


壊れそうなくらいの小さな声で隼人の名前を呼ぶ。

その声に反応した隼人は一瞬だけあたしに視線を落とし、


「無理すんな、馬鹿」


そう言って、隼人は表情を崩す。

きっと、重い。ううん…きっとじゃなくて相当にあたしは重い。


ましてや3階から1階までの距離にすれば相当に重くなる。


「ごめん…隼人」

「何が?」

「迷惑かけてる」

「美月は悪くねぇよ?俺の所為だから」

「……」

「俺の風邪が美月にうつったから」

「……」

「だからゴメン」

「隼人の所為じゃないよ。歩くよ、あたし」

「だから無理すんなっつってんだろ。美月は俺に甘えてろ」


目の奥がジンと熱くなった。

今にも目が潤んできそうだった。


別に隼人の所為でも、悪いわけでも何でもないのに。

なのに隼人はまた自分の所為にする。


やっと辿りついた保健室の扉を隼人は足で開ける。

ガラッと開いた扉。


「あら、橘くんどーしたの?」


たまに昼寝でつかっている保健室なのか保健の先生は知ってて当たり前の様に隼人の苗字を呼んだ。


「ちょっと熱あっから」


ギシっとベッドの音とともにあたしの身体が固いベットに寝かされる。