その手に触れたくて


「ちょ、美月どーしたの?」


続けられて聞こえたのは夏美の心配そうな声。

だけど、しゃべるんもしんどくて…


「熱っ…」


額を触られる隼人の声でまた閉じかけようとしていた目が開いた。


「え、何?風邪?」


夏美のテンパル声が聞こえる。


「授業中ずっとこんな感じ」

「ちょ、すごい熱あんじゃん」


直司に続けて夏美はあたしの額をそっと触れ声を上げた。


「俺の所為…」


ため息とともに呟かれる隼人の声があまりにも小さくて、しゃがみ込んで視線を合わせてくる隼人は悲しそうな目であたしを見た。


「とりあえず保健室連れてく」


隼人の視線があたしから直司と夏美に向く。


「あぁ」

「うん」


重なり合ってハモル様に2人の声が聞こえてすぐ、あたしの身体がフワッと浮かんだ。


「隼人、大丈夫?あたしも行こうか?」

「いや、大丈夫」


そう言ってすぐ隼人は足を進める。隼人の歩く小さな振動であたしは閉じかけている目を少しだけ開ける。

お姫様抱っこをしてもらっている所為か、所々から周囲にいる人達の小さな声が耳に入ってくる。


多分、きっと不思議そうに皆見てるのに違いない。でも、だからと言って歩く元気は今はない。