その手に触れたくて


「…美月?」


不意に聞こえた隼人の声に反応し、あたしは隼人を見上げる。

もう既にあたしを見ていた隼人は自転車を足で支えて止めていた。


「うん?」

「もう着いてっけど」

「あぁ…」


気が抜けた様に呟くあたしは辺りを見渡すと学校の自転車置き場だった。隼人の身体で支える様にあたしは自転車から降りる。

それに続けて隼人も自転車から降り、鍵を掛けた。


「やっぱ帰ろ」


鍵を掛けてすぐあたしを見た隼人は表情を崩しそう呟く。


「…ん?何で?」

「お前しんどそうだから」

「大丈夫だよ。それより隼人、飲み物買いたいから食堂行きたい」

「あぁ」


あたしの手を掴んだ隼人の足は食堂へ向かう。

その後を必然的に連れて行かれる様に足を進めて行くあたしは、キリキリと痛む頭に顔を顰めた。


「美月、何がいい?」


自販機を見ながらそう言った隼人にあたしは視線を送る。

隼人が見ている自販機は紙パックと缶ジュースしかなくて、あたしはその隣にあるペットボトルの自販機に視線を移した。