その手に触れたくて


「教科書に挟まってたんじゃね?俺の机の下に落ちてた」


そう言われて、その二つ折りの紙を受け取り開ける。


「あっ、」


その紙には“安藤美月様”と書かれたネイルのお店の割引券だった。


「ありがと…」

「長いと不便じゃね?」

「えっ?」

「爪」


隼人は煙を吐き出しながら、あたしの爪に視線を落とし、あたしも自分の爪に視線を落とした。

あたしの爪は、付け爪でピンク色にデコレーションしてある。

初めはカナリ不便だったけど、今ではすっかり慣れてしまった。


「大丈夫。前々からこーゆーの好きでさ、でもやる機会がなかったんだけど夏美と出会った時にここのお店教えてもらった」


あたしはうっすら微笑んで、さっき隼人から受け取った紙を二つに折り、スカートの中に入れる。


「あー…、夏美の伝授か」


隼人はフッと笑いながらタバコの煙を吐き出す。

その仕草に思わず目が奪われそうになった。


何でだろ…

自分でも分かんない。今日、初めて会ったばかりなのに…