その手に触れたくて


あたしには何が何だか分かんない。

河原を見つめてオレンジジュースをチビチビ飲みながら窓のサッシに肘を付く。

ボーっと眺めていると、隣に居た隼人はあたしと同じ態勢になった。

隼人がポケットからタバコを出し、少し腕を上げた時、あたしの腕に隼人の腕が触れる。


カチッとライターの音が微かに響きタバコの先端が赤くなる。

隼人は深く煙を吸った後、窓から顔を出し、ため息とともに煙を吐き出した。


窓全開、開いてると言っても、顔を出すには少し密着しなければいけない。

時たま触れる身体に何故か神経が隼人の居る右側へと集中する。


何でだろ…

何で時たま触れる腕に神経が動くんだろ。


「あー、そうだ」


隼人はそう言ってタバコを咥えたまま手をポケットに突っ込み、そこから何かを取り出しあたしに差し出す。


「何?」


目の前に現れた白い紙に思わずすっ呆けた声が出て、目線を隼人に向けた。