その手に触れたくて


こんな所に河原があるなんて知らなかった。

夏美んちに何回か来てたのに全然知らなかったよ。


「あれ?珍しいじゃん、こんな時間に」


暫くした後、直司は意地悪っぽく笑いながらそう言い、あたしはドアの方へと視線を移す。


そこには隼人が居て、隼人はあたしがいるソファーの所まで来て、あたしと直司の間のスペースにドカッと腰を下ろした。


「あー、疲れたぁ…」


隼人はため息を吐き出し、深くソファーに背を付ける。


「配達してきたわけ?」

「一応」


隼人が呟いた言葉に直司はハハッと笑う。


配達ってなんだろ…


「この前、駅にいた奴ハズレらしい」

「駅?」

「あの敦也が言ってたやつ」

「あー…」


隼人が声を漏らした後、馬鹿っぽく鼻でフッと笑い、

「アイツな…」


と思い出したかのようにまたフッと馬鹿っぽく笑った。