その手に触れたくて


「美月ちゃんはいいよ。夏美はダメだけど」

「はぁ?何でよ!!教科書貸したでしょ!!」

「お前はセコイ」


そう言って、直司は少しあいた窓の隙間に向かって煙を吐き出す。


「いいよーだ」


夏美はフンってそっぽ向き、颯ちゃん達の所に行き腰を下ろす。


夏美の所に行こうか迷ったけど、あたしはとりあえず直司が居るソファーへと向かった。


この息苦しさから少しでも解放されたい。

そう思ったあたしはソファーに両膝を付き、少し開いている窓から顔を出し俯いた。


「煙い?」


そう言ってくる直司に少し苦笑いをしながら「まぁ…」と答える。


「大丈夫?」

「うん」

「この部屋、臭い抜けねぇからなぁ…」


ボヤキながら直司はそう言って、少し開いていたドアを全開まで開ける。

ガラッと開いたと同時に思わず顔を上げ、目の前に見える景色に声を上げた。


「あっ、河原!!」


視界に入るのは一面、緑の芝生に囲まれた河原。


「いいだろ。この場所」

「うん。いいね」


あたしは目の前に広がる河原を見ながら、手に持っていたオレンジジュースの缶を開け、口に含んだ。

口の中でフワッとオレンジの香りが広がる。