その手に触れたくて


「笑ってんじゃねぇよ」


不機嫌な声とともに現れたのは直司で、その後ろからあっちゃんが笑いながら入って来た。

窓側にあるソファーに直司は腰を下ろし、あっちゃんは冷蔵庫を開ける。


「本人登場ー」


面白がって言う颯ちゃんに直司は不機嫌な顔をしたままポケットからタバコを取り出し火を点ける。


「勝手に決めんなよ」


ボソッと呟く直司に隣に居る夏美はクスクス笑い口を開く。


「ナオ、あたしと美月の分も宜しくね」

「はぁ?」

「もう人数に入ってるんだって。予約したって」


明るい声で振る舞う夏美だけど、何だかあたしは申し訳なくなった。

まぁ、自分から張り切って“行きたい”とは言ってないけど申し訳なく思う。


「あ、あたし自分の分は出すよ」


俯いてタバコを吸う直司に言うと、

「大丈夫。大丈夫」

そう言ってくる、あっちゃんの声が聞こえ、颯はクスクス笑ってた。


そのまま颯ちゃんは、あっちゃんの居る所まで行き腰を下ろす。


颯ちゃんから目を逸らし、直司に目を向けるとタバコを咥えながらあたしに向かってフッと笑った。