その手に触れたくて


Γ何も言ってねぇ」

Γ…え?」


何も言ってないってどう言う事?何で何も言ってないの? …どうして?

隼人の次の言葉を待ってみたけど、やっぱり隼人は全然口を開かなくて、


Γ何で…何も言わないの?」


再度あたしから口を開いた。

なんで隼人はお兄ちゃんに何も言ってないの?

なんで…
なんで…
どうして…

否定も何もしないって事はお兄ちゃんの答えを受け取ったって事なの?


ねぇ…隼人?


Γ美月の兄貴に言われた言葉に俺は言い返す事も何もできねぇって事」


そう言ってきた隼人があたしにはますます分かんなかった。


Γえ、ちょ、…ごめん隼人。意味…分かんないんだけど」


戸惑うあたしに隼人は一瞬だけ痛々しそうな顔をあたしに向け、また窓の外に視線を戻した。


Γそう言えば美月の苗字って安藤だったよな…」


隼人は意識が遠くに飛んでるかの様に突然、話を変えて独り言の様に呟いた。

いつもの隼人じゃないみたいに記憶がぶっ飛んで、ただボーとして言ってる意味も分かんない隼人にあたしは何て対応したらいいのか分かんなくなってた。


そんな隼人に何故かあたしの胸がソワソワし始めてた。