その手に触れたくて


久し振りに来たあたしを喜んでくれているかの様に目の前に飾ってあるユリの花がフワッとだけ揺れた様に感じた。


あたしは墓石をジッと見つめながら一息吐き、口を開いた。


Γあたし…何かもう、どうしていいのか分かんないんです。…またお兄ちゃんと喧嘩しちゃった…」

Γ……」

Γ美優さんは今でもお兄ちゃんを恨んでますか?お兄ちゃんと付き合ってた事、後悔してますか?」

Γ……」

Γ…あたしね、付き合ってる人が居るんです。でも、お兄ちゃんに別れろって…」

Γ……」


そう言った途端、あたしの目が少しだけ潤んできた。


Γ…お兄ちゃんですよね?ここに来たの。お兄ちゃん、何か言ってましたか?」


そうあたしは小さく独り言の様に問い掛け、目の前のユリの花を見た。

時たま揺れるユリの花がなぜか美優さんが何かを話してる様で――…


その花を見てると、ふとあたしの頭に美優さんとの会話が流れ込んできた。



――…


〈美優さんってどうしてお兄ちゃんなんですか?〉


当日あたしが中2になったばかりの頃。美優さんが高1年だった頃、あたしは美優さんにそう聞いた事があった。


〈なんですかって言われてもなぁ…。好きだから?〉


そう言って美優さんは笑ってた。


〈あたしには分かんない。あんなに喧嘩ばっかりして…そんなお兄ちゃんの何処がいいのか分かんない!!〉


そう言ったあたしに美優さんは哀しそうに表情を崩したのを今でも覚えてる。